天狗の庭から火打山(左)の眺望
『 夏の想い出を訪ねて (火打山〜妙高山) 』
妙高高原を訪れたのは、遠い過去の話になってしまいました。
夏休みの想い出。とりわけ、いもり池の真正面に見据えた秀麗な山容の妙高山には、身震いするほどに感動した憶えがあります。
当時は山に興味が涌きつつも、あのような高い山へ登るには体力と技量が必要で、私のような素人には無理だと、勝手に諦めていたものでした。
そして月日が流れて・・・。
今回の計画書を作り終えた時には感無量で、初恋の人に会えるような、そんな気持ちが彷彿として蘇えるのでした。
行程は一泊二日で火打山〜妙高山を縦走するものです。(ちなみに二座とも、言わずと知れた日本百名山です)
コース設定はいろいろとありますが、帰路にロープウェイを利用した比較的楽なコースを選びました。
* 山行データ *
■2007年8月3日(金) 〜 4日(土)
■コースタイム(時間は各人により異なりますので、参考までに留めておいて下さい。)
1日目(8/3 金) 天候:曇り一時晴(火打山山頂は風強し)
行動時間:6時間35分
JR信越本線 妙高高原駅 --- 笹ヶ峰 −− 黒沢−− 富士見平 −− 高谷池ヒュッテ
(9:20) 頸南バス (10:10) (11:25) (13:15) (14:10〜20)
−− 天狗の庭 −− 火打山(2462m) −− 天狗の庭 −− 高谷池ヒュッテ
(14:40) (15:40〜43) (16:30) (16:45)
高谷池ヒュッテ(湿原は、もうせん苔が秋の彩り)
たくさんのワタスゲが迎えてくれました!
火打山山頂にて
(明日はあの妙高山山頂へ! 中央に歩いてきた天狗の庭が見えます。その奥が高谷池ヒュッテ)
2日目(8/4 土) 天候:曇り一時雨
行動時間:8時間
高谷池ヒュッテ --- 黒沢池ヒュッテ −− 大倉乗越 −− 長助池分岐 −− 妙高山(2454m)
(5:00) (6:20) (7:00) (7:45) (9:10〜20)
−− 天狗堂 −− 大谷ヒュッテ(避難小屋) −− 山頂駅 --- 新赤倉三叉路 ---
(11:00〜15) (11:35〜45) (13:00) (13:26)
妙高高原駅 --- 長野駅
(13:50〜15:45) (16:32)
クルマユリがひときわ明るい!
(黒沢池付近)
妙高山山頂(溶岩ドームに神々しさが漂う 標高2454m)
妙高山を降る(高度感満喫!この先にクサリ場が待っていました。)
新幹線あさま501号で長野へ、信越本線に乗り換え40分程で妙高高原駅へ到着です。
駅前広場には、マッターホルンの鐘が鎮座し高原の風情を漂わせます。
ここで頸南(けいなん)バスで笹ヶ峰牧場のある登山口には50分程です。
(頸南(けいなん)バスの頸とは、頸城(くびき)三山(火打山、妙高山、焼山)の頸ではないかと。
運転手さんは時折りバスを停車させ、熱心に生声でバスガイド。のんびりと高原バスも好いものです!)
今回は大型の台風5号が日本海沖を北上するなかでの山行で、お天気も期待できそうになく、当初から諦めムードです。
(東北の飯豊連峰で、台風接近により無人小屋に2日間停泊した苦い想い出が蘇えります)
岩崎元郎さん(無名山塾主宰)曰く「私は予報が雨でも、とりあえず現地の状況を見てから判断を下します」のとおり、あまり無理をしないよう、天候悪化の折りには直ぐに引き返す決意で臨みました。
終点の笹ヶ峰登山口は、幸いなことに曇り空で風も穏やか、まずまずの天気でしたが、問題は最も接近する今夜半過ぎです。小屋に停泊する覚悟でいざ出発です。
ブナに囲まれた木道を行くと、ブルーのアクセントが際立つ、割と大きくとっても綺麗な蝶が!
(旅をする蝶、アサギマダラでした)
*日本本土と南西諸島、台湾の間を往復していることが知られていて、直線距離で1500km以上もの移動や1日あたり200km以上の速さで移動した個体もあるというのですから驚きです
ほどなく橋が見えると、水量の豊富な黒沢に到着します。(最初の水場。妙高は水場が豊富ですが、これより先は地図表記によれば煮沸が必要ということのようです。)
下山してきたファミリー登山者に状況を尋ねると、「火打山トライは風雨が強くて敗退してきた」とのこと。益々不安になりますが、他に山頂を極めた登山者がいたので歩を進めます。
皆さん、割と軽装で日帰り山行のようでした。
くねくねとつずら折りで息を切らしながらの、きつい登りも十二曲がりを過ぎたあたりで、休憩中の団体登山者に遭遇。(10名ほど)挨拶を交わしながら、先に通してもらいます。
宿泊する高谷池ヒュッテは完全予約制なので、ぎゅうぎゅう詰の混雑状態は避けられそうですが、我先にと良いねぐらを確保すべく、先を急ぐ姿は貧乏人根性むき出しですね。(笑)
時折り樹林帯を抜ける風に涼しさを感じては、富士見平を過ぎると急に目の前が開け、高谷池ヒュッテ、火打山、焼山が見えました。この時の感動はですね!
出発から4時間ほどで高谷池ヒュッテに到着。午後2時を過ぎていましたが、予定通りの時間でした。
ヒュッテ内に入ると、窓際のテーブルには楽しそうに歓談の声がいっぱい。思いの他、登山者が多いのに驚かされます。あの時に団体登山者を必死の思いで抜いた労は何だったのか(笑)
ヒュッテの礼儀正しい管理人さんの出迎えを受けた後は、若いスタッフさんに注意点等を聞く。
●飲み水は流し場の殺菌済みを使う。外の水場は煮沸要で使い分けて下さいとのこと。
●トイレは自然浄化を促進するために、使用済みの紙は備え付けのビニール袋にて持ち帰り。
最近新築されたばかりのトイレ舎は、一旦外に出る手間はありますが、清潔で匂いも無く快適でした。
(自然環境を守るために、ぜひ協力しなければね!!)
宿泊費用の一泊二食6,000円也+明日の弁当代(レトルトの赤飯+漬物で一食500円)を精算して、ヒュッテの若いスタッフさんに2階に案内される。オーソドックスな蚕棚風ですが寝床に余裕もあり、ふかふかで清潔な寝具に大満足でした。 (*^^)v
食事は2回制で5時からと言うことでしたが、火打山登山(往復3時間)決行で、2番目にてお願いする。
簡易ザックに雨具と水を移し替え、いざ出発!
軽装なので足取りも軽やか〜。 (^^♪
天狗の庭(湿原地帯)は、その場に留まっていたくなるほどの絶景です。
大きなふんわりとしたワタスゲの穂が風にたなびいて、高原の風情とメルヘンチックな世界に誘引されてしまいそうになります。
天候は何とか持ちそうでしたが、下山者の一人は頭のバンダナを飛ばされたとかで、風はかなり強そうでした。
実体験では、火打山山腹に背丈程の這松等が覆い被さり、防風の役割を果たしてくれていました。しかし裸地の処では、結構な強風感を味わいました。用心するに越したことはないでしょう。
高山帯になってから威勢の良い鶯(うぐいす)の鳴き声が止みません。避暑に来ているのか(笑)近くに居るのですが、姿形さえ現してはくれないのです。
対して、鷽(うそ)という鳥(体色はグレー系で喉元のバラ色が何とも美しくい鳥です)は、人懐っこく肩に止まってくるそうです。私も1mに満たない至近距離で木の実を啄ばむ鷽を見て、あまりの可愛さに何度も立ち止まってしまいました。
火打山頂は広々とした平地で、360°大パノラマ!!なのでしょうが、生憎の曇り空で視界も余りよくありません。しかし高田の街並みが雲の切れ間に現れ、日本海らしきもの?も青く見えます。目前には明日登頂予定の妙高山も威風堂々にどっしりと身構えています。
(手強そう、でも気合だぁ!)
そんな折り、怪しげな暗雲が頭上に近付いてくるではないか。こりゃ危ない!雷怖さに3分で山頂を後にしました。(笑)
高谷池ヒュッテには5時前に到着。一番の食事でも十分間に合ったねと苦笑した。(往復で2時間30分)
蚕棚でくつろいでいると、スタッフさんが1番の食事で良いですか?との朗報。なんでも2番の食事人数が多すぎたとのことでした。
夕食は5時を少し過ぎましたが、カレー+ハヤシ+ライスにパインナップルには、皆さん至極ご満悦でした。女性からお皿(長方形)の真ん中にライスを、両側にカレーとハヤシを盛れば混ざらずに両方味わえると教えて貰いました。感謝!
余らすのはご法度!おかわり自由で、私も便乗組になって2度の美味しさを味わいました。
(八ヶ岳ではカレーライスを3回おかわりしたっけ!若かりし頃・・・。)
NHK天気予報と妙高の自然ビデオ放映を観賞した。
(明日は朝と夕に雨。何とか行けそう!)
ビデオ放映は管理人さんのお手製で、プロに迫るほどの腕前!四季折々の美しい妙高の自然を、自作自演のナレーション入りで紹介していました。唯一ナレーションだけは、ぎごちなさも有ってか、ご愛嬌で笑いを誘っていました。(最後は拍手喝采で終演。)
夜半過ぎに強風と叩き付けるような雨音に目覚めました。
日本海沖を北上する台風の進路を予測できましたが、明日はどうなるのか不安な一夜を過ごしました。
(隣りの熊五郎おじさんの豪快ないびきが物凄い!台風以上の勢いがあると思った。(笑))
4時起床。雨も止み、風も治まった。まずまずのお天気です。
今回はタイツ非着用での山行でしたが、今のところ身体の筋肉痛も皆無で快調そのもの!
(年を取ると翌々日に出るのよ?と言われた(笑))
高谷池ヒュッテに別れを惜しみつつ、いざ進まん!(午前5時出発)
登山道は昨夜の雨で所々が泥濘状態で、スパッツを忘れたことが悔やまれます。
途中見晴らしの良い処で朝食タイム。昨夕のレトルト食は時間経過の割りには、硬くなく美味しく頂けました。
(お赤飯はもち米なので腹持ちがいいぞ〜い)
眼下に黒沢池ヒュッテと湿原を横断するが如く富士見平に通ずる登山道が見えた。歩いたらさぞかし気持ち良いだろうなぁと思う。
黒沢池ヒュッテはブルーの天体ドーム型で、プラネタリウムが出来そうな特徴ある山小屋でした。
大倉乗越までは、樹林帯の中を喘ぎながら登ります。妙高山へ手が届くかのように、聳え立つ姿を仰ぎ見れるのですが、せっかく稼いだ高度も一旦降らないと妙高山の登り口に辿り着けません。
(トホホ)
しかも登山道に一部崩壊箇所もあったようで、急勾配の迂回を余儀なくされます。
(迂回道を切り拓かれた大変な労苦に、感謝申し上げます。)
長助池分岐に着いた時には、心底ホットした気分でした。蒸し暑さに加えて、虫にも纏わりつかれたのですから。
(山では肌の露出にご用心!でしょう。虫除け対策やUVカット等に気をつけたいものです。)
その後は快調に登りつめ、妙高山山頂に到着。(出発から約4時間かかりました。)
時々ガスが湧き上がり、周りが白く薄暗くなることも。
火打山とは対称的に、見上げるような岩峰群が連なり、神々しさが感じ取れます。
(尾瀬で例えるならば、なだらかな山容の至仏山が火打山(ひうち)になり、険しい山容の燧ヶ岳(ひうち)が妙高山と言ったところでしょうか。ナンヤ!よけい分からんようなってしもうとるわい(笑))
山頂を背に、本日の難所のクサリ場があります。でも足元に窪みが掘られているので、思ったより楽に降りられました。
現地の案内表示で天狗堂(地図上では天狗平)に着き、一息休憩をいれます。
左に燕温泉への道を分けて、赤倉方面(右)へと行くと大谷ヒュッテです。遥か遠方にヒュッテが見えると10分足らずで到着です。グレー系のお洒落な人目を惹く建物で、2階建て無人小屋です。布団が用意されているのには驚きました。冬季の積雪に備え2階にもドアがあります。(凄い積雪量なんですね!)
ここで品の良い女性パーティと遭遇。昨日はロープウェィが強風で休止してしまい、今日になってしまったのだとか。これから美味しい昼ご飯が食べれると喜んでいましたが、妙高山は以前にも登っており、今日はここまで・・・。
こうして気の合った仲間同士、のんびりと自然に親しみながらの登山も実に良いものですね!
ダケカンバやブナ林の中を通ると実感できるのですが、爽涼とした風が肌に感じとれます。正しく人間に優しい癒しの空間を作ってくれますし、水源確保にも役立っています。こうした環境が開発の名の許に森林伐採や環境破壊に繋がっていかぬよう願って止みません。
私達が森林を抜ける頃、雨足の強さに初めて気付かされました。ここからは、スキーゲレンデを傘を差しながらのジグザグ歩行に移ります。勾配が急で長く続くためかスカイケーブル駅に着いた頃は、膝がガクガクになり結構疲れました。
11分の乗車で麓に到着。歩行では1時間40分の行程に、スタミナ切れの身には敬遠してしまいます。(笑)
ロープウェイも動いてくれて感謝!幸いにも台風の影響も少なく、無事に縦走できてダブルに感謝でした。(^^♪
P.S
★新赤倉温泉で立ち寄り湯の予定が、教えて頂いたのとは逆方向のバスに乗車。妙高駅に強制連行?となってしまいました。(笑)
乗客は私達だけで、バス運転手さんとの世間話も弾みます。運転手さんお薦めで、駅前の美味しい妙高蕎麦のお店(加藤さん)を紹介してもらいました。「もりそばがいいよ!」と親切そのもの。
★地元の常連さんが出入りするお店は確かなものです。
年配ご夫婦が長年の熟練の技で磨き上げた、たいへん美味しい蕎麦を味わう事ができ、お腹も心も幸福感でいっぱいになりました。
そして、ご主人が茹でたいんげんを山盛りにサービスしてくれました。(涙が出そうでした。感謝します!)
★お風呂は近くの妙高ホテルさんのお世話に。汗を流し綺麗さっぱり、爽快になれました。若女将ふうの女性が外までお見送りしてくれて感激!(私達はただの立ち寄り湯客なのに、ここまで送迎して頂けるなんて、真心のサービスの真髄を見た思いでした。)
★お土産は加藤さんのお隣りの石田屋さん TEL:0255(86)2075 で購入。ここで幻の駅弁、 笹寿司を発見!
* 妙高高原に古くから伝わる郷土食で、熊笹で包まれた酢飯の上に、ヒメタケノコ、鮭、錦糸玉子、シイタケ、ゼンマイなどの具がのる押し寿司ですが、見掛けは普通のようでいて、味わうほどに旨味がお口の中一杯に広がります。ぜひお勧めします。